肺の病気を知る治療

Q

治療にはどのようなものがありますか?

大きく分けて、手術、薬物療法、放射線などの治療法があります。最近の医療の進歩によって、新たな薬物療法として免疫チェックポイント阻害剤など様々な治療の選択肢が増えてきました。ステージや患者さんの状態に合わせて、治療法を選択することになります。

病期(ステージ)と手術の関係

TisとT1miは腫瘍を切るのみで治る可能性が極めて高いがんです。 一般的にT1-T3では手術が治療法の候補に挙がります。Tが上がるにつれ手術が難しくなり、T4は手術が候補として挙がらないほどの進展している状態です。
N1は肺葉切除と同時にとれる近くのリンパ節までの進展です。 N2は、手術中に特別に切除しないと取り切れないリンパ節までの進展です。N1-2は手術の対象として考慮されます。N3は手術では取り切れないリンパ節への進展を指します。
M1は手術の対象にはなりません。

Q

肺がんの手術について教えて下さい。

胸腔鏡というカメラを併用するケースが多く、傷口は小さくて済むようになっていますで、進行期でなければ、昔の手術の様に大きな傷や肋骨を切ったりすることは少なくなりました。また、最近ではロボット支援下手術が普及してきています。手術機器の先端が術者の指の動きと連動して非常に繊細に動きます。ロボット支援下手術も胸腔鏡手術と同様に傷が小さく、早く回復することが期待できます。がんの大きさが小さい場合は、切除範囲を小さくする縮小手術が近年普及していますので、早期発見の場合、手術後も肺機能が保たれる場合が多いです。。肺を切除した後、生活が普通に送れるかどうかを予測するため、術前に心臓・肺などの臓器機能を検査します。入院は短くて約1週間程度です。

Q

患者が希望しても手術を選択しない場合がありますか?

ステージが高く、手術で取り切ることが難しい場合は、手術以外の方法が選択されます。腫瘍が残るような手術を行うよりも他の治療法を選んだ方が、経過の良いことが多いとされています。 また、肺がんのステージが切除可能な状態であっても、患者さんの肺や心臓などの状態によっては、手術後の生活に大きな支障が出るおそれがあるので、手術以外の治療法(例えば、放射線療法、薬物療法や、両者を組み合わせたものなど)が選択に挙がります。

ステージ別の治療の組み合わせはこちらをご覧ください。

ステージ別の治療の組み合わせ
Q

薬物療法についておしえてください。

現在では、しっかりした研究によって効果があることが確かめられた抗がん剤が治療に使われています。薬物療法は手術ができない場合の主な治療法になります。手術の前に腫瘍の縮小を目指して行う術前化学療法、手術後に再発の可能性を下げるために行われる術後補助化学療法、放射線治療と組み合わせて行う化学放射線療法、化学療法のみを行うものなどがあります。Ⅱ, Ⅲ期の患者さんでは、手術前後の免疫チェックポイント阻害剤が2022-23年に保険診療になり、再発率が低下し完治できる可能性が上がってきました。化学物質による抗がん剤治療はすべて化学療法なので、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を使った治療も化学療法ですが、便宜上これ以降、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤以外のものを化学療法として記載します。(厳密な区別は必要ありません)

Q

化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の違いを教えてください。

化学療法

化学物質を用いた治療。がん細胞の増生を阻害することを目指します。組織分類などがんの特性に合わせて、薬剤が選択されます。比較的、適応範囲が広く、個別化医療の対象にならなかった場合も治療が行えると言う利点があります。

分子標的薬

がん細胞やがん細胞を助ける細胞がもつ分子(タンパク)にだけ反応することを目指して作られた薬物です。主にがん細胞の増殖に関わる分子が標的になっており、その分子の活動を邪魔することによってがんを攻撃します。分子標的薬は近年の進歩が著しい分野です。

免疫チェックポイント阻害剤

抗がん剤や分子標的薬ががん細胞を直接攻撃する薬であるのに対し、免疫チェックポイント阻害剤は自身のリンパ球に働き、もともと体にある免疫機構を活性化する薬です。がん細胞は免疫から逃げる仕組みを持っており、それを邪魔してリンパ球にがん細胞を攻撃させます。近年の進歩が著しい分野です。

化学療法の個別化治療について

最近では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など、新しい治療が行われるようになってきました。それらの薬剤の治療効果は、検査で前もって予測することが可能となり、治療効果の高い治療薬が選ばれます。これを個別化治療と呼んでいます。検査には、遺伝子変異検査や、免疫染色などがあります。今後、治療に関しての研究が進むことで、より個別化治療が進んでいくものと考えられます。

Q

薬物療法は、副作用がありますか?

副作用が出ることがあります。化学療法は、食欲が落ちる、吐き気が出るなどの副作用が出ることが多かったのですが、現在は、吐き気止めなどを使用することにより副作用が起こる頻度はさがっています。そのため、外来で治療を行う事が多くなってきており、仕事を続けながら、治療を行う方もいます。分子標的薬でも、皮疹や下痢が多くの場合見られます。間質性肺炎など重篤な副作用が見られる場合もあります。免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法は、化学療法の副作用と違う特殊な副作用がでますので、専門医による診療が必要です。 いつ頃どのような副作用が現れるかは薬剤によって異なりますが、症状が現れやすい時期に適切に対処することで副作用を軽減することができるようになってきています。治療開始前に主治医や薬剤師、看護師から十分に説明をうけましょう。また症状がつらいときは無理せず早めに相談しましょう。

Q

放射線治療について教えてください。

2つの治療法があります。

  1. 肺の腫瘍そのものに放射線治療を行う治療(根治照射)として行う場合、放射線治療の進歩により、最近では手術と変わらない治療成績の報告もあります。腫瘍に有効な放射線照射範囲を絞った放射線治療機器が用いられます。
  2. 骨などに痛みがでた際に痛みを取るための治療(緩和照射)
Q

どのような病院で治療が行われていますか?

愛媛県では、各地域にがん診療を専門とした病院があり、それぞれの病院では専門の先生が診療を行っています。愛媛県では、以下の病院があります。詳しくは『病院を探す』をご覧ください。

Q

「治療前の禁煙」は必要ですか?

禁煙なしに手術を行うことは、術後の感染症など合併症の危険性が高くなるため、強く禁煙を勧めています。禁煙困難な方には禁煙外来等の受診を勧めています。 また、喫煙は肺がんのリスクを大きく高めます。逆に禁煙すると肺がん罹患リスクは低下します。一度肺がんと診断されて寛解した方、疑いがあるとされた方は治療していなくても断煙を心がけましょう。


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